2つの美術展

 ミヒャエル・ボレマンス展とラファエル前派展

 ベルギーの現代美術家ミヒャエル・ボレマンスの絵画を、北品川の原美術館で視ました。個展としては彼の日本初の展覧会で、原美術館で開催することを長く温めていたそうです。
 原美術館は、実業家 原邦造の邸宅として昭和13年(1938年)渡辺仁(上野 東京国立博物館の設計者)の設計で竣工したものを美術館に改装、昭和54年(1979年)に開館しました。現代美術の紹介にも意欲的に取り組む美術館です。その静かな佇まいは、ボレマンスの絵を鑑賞するのに適していると感じました。
 彼の絵は具象画といえると思いますが、写実を超えてなにか視る者に不思議な感覚を伝えてくるような絵です。その独特の構図や色や筆遣いなどから、静かであり小さい画面から何かを訴えてくるようです。日常的でありながら非日常を、どこにでもありそうな題材からどこにもないようなイメージを汲み出してくる独自の絵で、今までに見たことのないものです。

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 ラファエル前派展では、目当ての絵がありました。ぜひこの絵の前に立って視てみたいと思っていた絵です。ジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」。シェイクスピア作「ハムレット」の悲劇の恋人を題材にしたこの絵は、もう随分以前、何かの音楽関係の記事に載っていたときから気にかかり、一体どんな状況の絵なのか、実物はどんな大きさの絵でどんな風に描かれているのか、などずっと出会える機会を待っていたようなところがあります。
 実際に立ってみて、その絵の細密な描写や、150年以上たっているのに輝きを失わない色、なにより絵の構図や写実的でありながら超現実的なものとしてそこに存在する絵の大きな存在感を感じましたが、現実的には、美術館では多くの鑑賞者がこの絵の周りに集中し、視たい場所の確保は以外に難しいのです。斜めからや、遠くから眺めて、再び絵の前に立ってなどの工夫を凝らし、ようやく正面を確保、なるほどこう描かれているのかと納得し、そのあとで図録を眺めながら染入るように、感じるものの大きさに楽しむ絵でした。
 ミレイはこの絵を描くとき、絵の中央を残して、周囲の部分を現場で書きこみ、後日アトリエの浴槽にモデルを浮かせて描いて、合体させて完成したとのことです。そんな描き方がどこか超現実的なイメージを膨らませるのかもしれませんが、そんなことより、この絵の持つ力はずっと大きいと感じました。20年以上も前に視た雑誌の記事に挿入された絵の記憶が今に繋がり、鑑賞の楽しみをあらためて感じることができました。
 このほかにも、珠玉の作品ぞろいでご紹介したいのですが、力不足と紙面の都合で割愛させていただきます。

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ご紹介したにもかかわらず、ボレマンス展は3月いっぱいで終了、ラファエル前派展は明後日4月6日までと、
差し迫り本当に恐縮です。

                                    2014.4.4 埼玉住まいの会  手島 亙
by sumainokai | 2014-04-04 09:19 | 手島 亙 | Trackback | Comments(1)
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Commented by desire_san at 2014-04-06 06:39
こんにちは。
私も六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーでラフアエル前派展を見てきましたので楽しくブログを拝見しました。
保守的で停滞気味のロイヤル・アカデミーに反乱を起こし、新しい精神で芸術を創造しようとした「ラフアエル前派」の画家たちの気持ちには共感しましたが。印象派、フォービズム、キュビズムのような明確な理論や絵画手法を持った芸術運動でなかったラファエル前派は、この画家の感性や市資質の違いから大きな芸術潮流には育ちませんでしたが、ミレイ、ロセッティ、バーン・ジョーンズの魅力ある作品群から、画家の独特の自意識や美の感性を楽しむことができました。

今回の美術展で漠然としていた「ラフアエル前派」の全体像が見えてきたように思い、個々の画家の魅力も含めて「ラフアエル前派」について私なりにまとめてみましたので、よろしかったら読んで頂けると嬉しいです。
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